高野敬市 | ルースターズは特別光っとったんよ

高野敬市さんは北九州のタウン誌「おいらの街」元編集長。私達(1969年生れ)世代はみんなこの雑誌を毎月買ってライブをチェックしたり地元バンドの事を知って行ったの。この日は別件でお会いしたのですが、ルースターズの話になりとても貴重なお話を聞かせて頂きました。(2012年)


 

高野:「めんたいロック」つうのが出来たのはルースターズからなんよ。それまで、鮎川(誠)さん達のバンドもめんたいロックやなかったんよ。

 

セーナ:後からついた名前、って、それ、Dobbさんがこの前言ってた。で、始まり出したの感じが、サンハウスくらいからで、ルースターズとかが「めんたい」って名前が付いた頃のもので

 

高野:だけね、「めんたい」つったら、ルースターズとロッカーズとねモッズを含めて「めんたい」っち言いだしたんよ。福岡のバンドやけね。それまで「めんたいロック」つう言葉は無かった訳で、だけ、まぁ、その「めんたいロック」つうのは、どっちかというと俺から見たら、ロッカーズとかモッズとかで。福岡と北九州のバンドはちごう(違う)とった訳で、いわゆるルースターズつうのは、いわゆる「めんたいロック」ち言われるけど、そんなんウチら関係ねぇや、ちゅう感じで、

 

セーナ:そう!そう!そう!みんなその世代の、まだ、ルースターズがちっちゃかった?みたいな時代の世代の人達は、みんな口をそろえて

 

高野:んでね、サウンド的にルースターズは特別光っとたんよ

 

セーナ:アタシね、去年(2013年)福岡にルースターズ見に行ったんですね。初めてオリジナルメンバーで見て、この4人が創り出す音ってすごいと思いました。

 

高野:あの頃は、大江が元気やったけ、まだ凄かったし、北九州らしいバンドやったね。

 

 

セーナ:北九州らしい、と言うのは?

 

高野:要するに労働者の街とか、そういった・・・まぁ、商業ロックやない。ちょっといわゆる、ブルースが入った感じ。商業ロックやない街やけ。

 

セーナ:あ?!そうなんや!

 

高野:だけ、例えばロッカーズの陣内(孝則)とかスターになっとるでしょ。要するに、本来、そんな風に変化が出来る人なんよ。北九州の人はあんまり変化が出来ん。音楽なら音楽一筋よ。

 

セーナ:だから、池畑(池畑潤二、ルースターズのオリジナルメンバー。ドラム)さんとかも音楽一筋やし?

 

高野:そう、そうですよ。だけ、要は、ああいうテレビとかスターとかいうのが、アンチ、な人達がバンドしよんやけ。

 

セーナ:不器用なん?

 

高野:ああいう(テレビとか商業的な)のが、嫌いなんよ。要するに、根がやっぱり(ここは)ブルースとかジャズとかが盛んな街やったけぇね。「男っぽさ」そういうのがあるんよ。俺はめんたいロックつっても、大江(慎也)達が出る前のシナロケとかやないで、「めんたいロック」つうのは・・・

 

セーナ:それの一番の頂点が、ルースターズみたいな?

 

高野:そうよ。

 

セーナ:でぇ、いろんなそんな事もあるんやけど、「めんたいロック」って言う言葉は、「福岡のロック」と多くの人が指していると思うんですね。私、いろんな国に行って音楽聴いてきたと思うけど、北九州に帰って来て行きたいのは「高塔山Jam」だけなんですよ。この前ルースターズを見た時にも感じたんですけど、ここの街のブルースなんですよ。

 

高野:うん。そうよ。

 

セーナ:そしたら、それを残したいし、残ってほしいし、それに気付いてほしいし、「この街のブルースなんよ」っち。それは、ニューヨークでメトロポリタンオペラに行ってオペラを聴いても、空気と土地と人のエネルギーが違うんですよ。だけど、めんたい、あのビートのロックにはこの街のブルースがあるんですよ。外から見た私だから見えるものもあると思うし。違うジャンルを見たからね。で、それは、ここの街の宝だと思うんですよ、音楽としての。で、それを「めんたいロック」という言葉で・・・もう時間が経っているので・・・もうあの辺多分、若い人たちにとっては一緒なんですね。シカゴブルースとかニューオリンズジャズの様に、「福岡のロック」っていうので「めんたいロック」という言葉を残したいんですよ。

 

でも、私達ですら、めんたい、めんたい、言いながらも、「おいらの街」読んでたから「めんたい」って言葉を知ってただけで、どうして「めんたい」って名前が付いたかとか・・・どうして福岡でロックが育ったのかなんて知らないんですよ。そういう事もこのサイトの中に入れて行きたいな、って思ってるの。

 

高野:北九州のバンドが東京とか行くでしょ、で、アンコールでね、ルースターズの曲をやってるんですよ。その位ルースターズっつうのは、ロック好きな人達は知っとるんですよ。

 

セーナ:大江さんって、繊細な方だと思うんです。会った事無いけど。でも、地元があなた達の音楽を、大江さんを愛してるって、エールも送りたいんです。

 

高野:大江の感性は、ちょっとずば抜けとったからね。

 

セーナ:去年、福岡で見た時に。私、16歳までしかロック聴いてなくって、大人になってニュールンベルグ(でささやいて)とかCMCを見たら、びっくりしました。

 

高野:やっぱり、ルースターズって言ったら、大江なんですよ。それと、池畑。

 

セーナ:あ!アタシ、高校一年の時に、ゼロスペクターズ(池畑さんのルースターズ脱退後のバンド)をIn & Out(30年位前にあった小倉のライブハウス)で、見たんですよ。初めてドラムってすごい、って思ったの。で、ルースターズ見に行った時も、ワタシ、池畑さんにくぎ付け!池畑さんが、どういう体のバランスで叩いているのか、どういう風にエネルギーを使っているのか、もう池畑さんにくぎ付けなの?(笑)

 

高野:やっぱり、池畑ですよ。それと、ギター、大江ですよ。ギターリストって、日本じゃ、まぁ、世界的に通用するようなのってそんなにいなくて、やっぱりボーカルなんですよ。ボーカルとリズム。

 

セーナ:これ、本当か解んないんですけど、以前誰かが、花田(裕之、ルースターズのギター)さんが、「やっぱ大江はギターが上手い、敵わない。」と。言ったとか言うのを聞いたの。それで、どうなのかな?、って思って、ルースターズ見た時に、(大江さんを)じっと見てたら、大江さんのギターにはひとつひとつ意図があるんです。ただ弾いてるんじゃなく、メッセージがちゃんとあって、意図があるんです。あの人。

 

高野:それは、その、いわゆる大江の感性なので、やけ、大江しか出来んのよね。特にテクニックが素晴らしいとかではなく、感性のギターね。ルースターズの音は、シーナ&ロケッツとも全然違うんだよ。

 

セーナ:シナロケは、「愛」のバンドな気がする。なんだろう、う?ん、ルースターズって、色んな葛藤とか苦しみ、破壊、創造とかから生れてる感じがして、でもシナロケって「愛」なんですよ。なんか、解ります???

 

高野:うん。そうやね。まぁ。わかる。

そうね、色んなバンドとか、色んなジャンルの音楽を聴くと、ルースターズはジャンルを超える良さがあるんですよ。そういうバンドは珍しいんですよ。

 

セーナ:いやぁ、やっぱ、CMCやニュールンベルグ聴くと、やっぱすごいね。

 

高野:まぁね、最初にルースターズに会った時に、大江が一番光とったね。これは、もうこいつ、まるでジョンレノンの若い頃の様な、そういったオーラが出とって、「絶対売れるな」と思った。

 

セーナ:いやぁ、大江さんは、特別ですよ。あまり大江さんの事って解りにくいと思うの。でも、大江さんの、歌えないとかいうエピソード聞くたびに、なんとなくわかる気がするんですよ。私も、長い間歌えなかったんです。ハートが開いたり、伝えたい事がないと私は歌えないんです。大江さんが、突然歌えないとか言って困る、とか聞くと、なんとなくその気持ちわかる気がするんです。だからこそ、いいもの生んでくれるって言うか。

 

高野:大江は、やっぱね、非常にこの、感性が強すぎて、非常にきついと思うんだよね、本人は。

 

セーナ:だけど、だからこそ、ただの商品じゃないんだよ。多分、魂削ってやってるんだから・・・って、私はなんか思うの。